第二十四説 中編2「おい!おいおいおいおい!!やさ男があんなんだッてことは、他のやつらもたいしたことないんじゃねェッ!?まァ、おれ様が出るまでもないだろうけどよッ!殺しがしたいからいッてくんぜッ!!」一人で話し終えると、天秀やおびえている男の同意を待たずして、再びランドテスタの元へ走り出した。 「来るぞ」 先ほど同様、紅炎はファラリカの攻撃に備え、ランドテスタは残った左手の銃を右手に持ち替え連射。だが、やはり弾は一発も当たらず、高笑いをあげながら避けていく。 「ほらほらッ!もう来ちまッたぜッ!!」 気がつくとランドテスタの目の前に。 「いくぜェェ!!」 相変わらず単調な攻撃。肉弾戦があまり得意ではないランドテスタでなんとか避けれるほどだ。 「んなッ!?避けてんじャねェッ!!」 繰り返される拳だけの攻撃。その攻撃を受けている間にも、隙を見つけては弾を撃ち込んでいるのだが、どんなに隙をついても、どんなにファラリカと銃口が近づいても当たらない。紅炎も応戦しようと何度か試みてはいるが、単調だが激しい攻撃に、なかなか手を出せずにいた。 「そろ、そろ、当た、れッ!!」 一際大きい攻撃。それも避けきり、根気強く出来た隙に撃ち込む。 “チッ” 銃声の少し後になにか、かすった音。見ると、腕から軽い出血が。銃弾がようやくファラリカをかすめた。 よし!当たった。 腕をかすめたことにより、ようやくファラリカの動きに目が慣れてきた、と悟ったランドテスタは、守備から一転、攻撃に転じようと試みる。 「いてェッなッ!」 その前にファラリカからの反撃。右から向かってくる拳に左に軽く避ける。拳はそのまま振りぬかれ、ファラリカが再び態勢を崩す。そこに銃撃を乱射。勝利への方程式が見えた。 拳が思惑通りランドテスタの顔の横を通り過ぎる。そして、ファラリカの身体が目の前を横切る、はずだった。 思惑とは違い、ランドテスタの目の前を横切っている最中のひじが顔に向かって飛んできたのだった。 「ぐっ・・・!」 初めてまともに攻撃が入る。ひじに顔が持っていかれ、一瞬ファラリカが視界から外れた。 やばい。 急いで持ち直し、ファラリカの石化させるらしい拳を捜す。 大丈夫、すぐ見つか 「ガッ・・・!?」 なん・・・だ・・・? ファラリカの両拳には動きはない。が、ランドテスタのわき腹に痛みが走る。なぜだかわからないまま、ファラリカとの距離が開いていった。ファラリカが動いているわけではない。自分が宙を移動しているんだ、ということに気づくには、そう時間がかからなかった。そしてすぐに、もう一つの疑問も解決することになる。距離が開いていくと、ファラリカの全身が視界に入るようになる。そのファラリカを見ていると、右足がまだ宙に浮いていた。そう、ランドテスタは、蹴られたのだ。 「っと!大丈夫か!?」 飛ぶランドテスタを受け止める紅炎。受け止められると、同時、蹴られた時に抜け出た酸素を吸い込もうと試みた。なかなかうまく呼吸ができない。だが、身体が酸素を欲する。しばらく、喉だけが鳴り続ける。 「ヒャハ!もう勝ったとでも思ったか!?やさ男さんよォ!!」 「・・・だまれ」 “だ”はかすれてほとんど発音できていなかったが、声が出た。ようやく、つぶれた肺が元に戻ってきたようだ。そして、耳障りな高笑いを続けるファラリカに、黙らせようと銃を向け、引き金を引く。 「おっ・・・ん?」 だが、銃は弾切れで、“カチッ”という音だけを上げただけだった。 「チッ・・・」 「ブッ!・・・ハーッ!カッコワリィ!!」 腹を抱え笑い続けるファラリカに我慢の限界を向かえ、急ぎホルダーから弾薬を詰め、銃を向ける。 「ファ」 「落ち着け!」 「!?」 引き金を引く前に視界が暗くなると同時に紅炎の声がする。構えていた銃を降ろすと比例するように視界が開いた。頭がなぜか少しばかり軽い。後ろを振り向くと、紅炎がカウボーイハットを手にしていた。視界が暗くなったのはカウボーイハットを深く被らされたからだ、と気付く。 「ペースを乱されすぎだ。弾切れにきづかねぇなんてらしくねぇ」 カウボーイハットを戻してやる。 「それはあいつがイラつくから・・・」 普段のポジション、落ち着く場所を探す。 「いつものようにハット、傾けとけよ」 「!!」 カウボーイハットを傾け、顔を隠す。それが動揺した時の癖であり、それをすることによって冷静さを取り戻す唯一の鍵でもあった。しかし、そのことは誰一人にも話していない。自分と、自分の師くらいしか知らないことだったはずだったのに。 「知っていたのか、意味があったこと」 「当たり前だろ?リーダーだぜ?」 「?・・・あぁ。そうだったな」 「完璧忘れてやがったな!!」 「・・・ほォ・・・。余裕そうじゃねェか」 笑顔が戻ったランドテスタをファラリカが遠くで腕を組んで見ていた。 |